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弟のこと

最近、弟のことを思い出す。
弟は1歳半のころ、馬車にひかれて他界した。亡くなったときの眠るような横顔が印象に残っている。
父と母は農作業に行っていた。世話をしていたのが誰かは覚えていないが、祖母は病床にあったので、8歳の妹が見ていたのだろう。弟は、妹が目を離した一瞬の隙に外に出て、坂道を駆け下りてきた馬車にひかれた。

当時は、日に何度かバスが走る程度で自動車は走っておらず、交通事故の心配は誰もしていなかった。しかしその日、なぜか坂道を駆け下りてきた馬車は、弟を避けることができなかったのだ。

9月の義母の葬儀、11月には知人の葬儀に列席して舎利礼文を聞いたのがきっかけで、弟のこと、母(健在)のことを思い出した。

私は当時10歳、悲しくて泣いたという記憶は残っていない。残っているのは、可愛い盛りのわが子を失った母が唱えていた、「一心頂礼(いっしんちょうらい)万徳円満(まんとくえんまん)」で始まる舎利礼文と木魚とリン(鈴)の音である。
母と私はちょうど20歳違う。若かった当時30歳の母がどのような思いで唱えていたのかを考え、母と亡くなった弟のために今更ながら涙を流している。
故郷の墓地の地蔵堂には、十字架のような模様の前掛けをした弟のお地蔵さんが立っている。この世を去った弟と同じく、お地蔵さんの姿は変わらない。

弟・武志の世話をしていた妹・信子は、42歳でガンでこの世を去った。まだ「のぶこ」とは言えず、「おぶ、おぶ」と呼びながら後を追っていた55年前の弟の姿の記憶は、かなり薄れてしまった。

実家の仏壇にあったたった一枚の弟の写真は、55年を経てかなり劣化していた。預かってきて近くの写真屋さんに修整してもらい、実家に戻した。
額縁に入れられた弟の写真に、「(この子を)粗末にしたな」と85歳の母は涙ぐんだ。

今日4月30日が、弟・武志の命日である。

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